現在、世界171か国で販売されており累計75億本以上売り上げているエナジードリンク界、不動の王者「Red Bull」について今日は取り上げていきたいと思います。1980年代からMonsterなどの競合商品が現れるも未だトップの座に君臨し続けています。
しかも年々販売量が増加しているということですから驚きますよね。そのきっかけを作ったのが何を隠そう日本のある製品だったのです。そこから2人の経営者が出会い、戦略を徹底することで今の地位を築いていきました。
それではまず、Red Bullの前身となる「Krating Daeng」はなぜ誕生したのか物語はタイから始まります。
Red Bullはタイから始まった

多くの方がその事実に驚くのではないでしょうか。オーストリアに本社があるため、勘違いしていた!という方も私だけではないはずです。
創設者の1人である「Chaleo Yoovidhya(以下 Chaleo)」はタイの田舎、鴨飼いの家庭に1923年に生まれます。彼は5人兄弟の3番目として生を受け、お世辞にも裕福な生活が送れたとは言い難い状況であったといいます。そのため、最低限の教育のみを受け家族を助けるために働き始めます。
その地として選んだのがバンコク。実は兄弟がバンコクで小さい薬屋を経営しており家族に送り出されるような形で働き始めたのです。彼にとって初めてとなる経験が多かったものの、研究熱心であったということもあり着実にセールスマンとしても実績を積み、科学の知識も同時に獲得します。
1962年に貯めたお金でや製薬会社「Phamaceutical」を設立。ここから歴史は動き始めるのです。1970年に入ると彼は面白いマーケットの仕組みに気づきました。
リポビタンDがきっかけだった。

セールスマンとして長年、実績を積んだ経験はここに活きることになります。タイで流通している多くのエナジードリンクは輸入品であるということに気づいたのです。当時エナジードリンクの市場はタイにおいて十分に開拓されておらずそこに目をつけました。
1970年代この市場においてタイで最も人気があったのが、日本から輸入されたリポビタンDでした。リポビタンDにおいて重要な成分であったタウリンに注目し「Krating Daeng」を低所得者向けに安価に販売を始めました。当時のリポビタンDは富裕層向けに販売されていたため、ここに違いを生み出したんですね。
タウリンとは?
人間の体内ではごくわずかしか生成することができないもので、この化学物質が大きな影響を人体に与えます。筋肉、神経系を刺激し劇的にパフォーマンスを上げるものです。
そこにカフェインやビタミンB群、砂糖を加えRed Bullのベースとなる「Krating Daeng」がここに完成したのです。ちなみにKratingはタイ語で(赤みがかった毛の)牛を表し、Daengは赤を意味しています。
経済が発展途上であったという背景もあり、建設業者やトラックドライバーなど長時間かつ深夜にも働かなければならない労働者(ブルーカラー)の間で爆発的なヒットをすることになります。
タイから世界へ翼を授けた者

1982年、Chaleoの作ったエナジードリンクは世界の一歩を踏み出すきっかけに出会います。オーストリア人の「Dietrich Mateschitz(以下、Dietrich)」が当時働いていたBlendax(歯磨き粉メーカー)のビジネストリップでタイに訪れたのです。
彼はタイに到着した際、長い時間のフライトとタイムラグに苦しんだため、エナジードリンクを買うことを決めました。それがたまたまChaleoの作った「Krating Daeng」だったのです。驚くべき効能のとりこになった彼は1日に8本飲んだ。との逸話があるほど。
これを何とか持ち帰りたい。そう考えた彼はChaleoにその旨を伝え、ついに2年後の1984年にChaleoが51%、Dietrichが49%の株を保有する形で、オーストリアに会社を合同で設立することになります。
しかし、簡単な道のりではなかった
「Krating Daeng」はタイで爆発的な人気になりました。理由は時代の背景と絞ったターゲット層が見事に合致したためです。そのため発売から2年でエナジードリンクの市場のトップを獲得(タイ国内での)したとされています。しかし、同じような道をこのRed Bullは辿ることが出来なかったのです。
原因はすでに成長しきったオーストリアの経済状況にありました。「Krating Daeng」の売り出し方は主にブルーカラーの労働者向けで時代背景もマッチして、人気を加速させました。つまりDietrichは違うアプローチで商品を売り出すしかなかったのです。そこで彼の考えた戦略はこのようなものでした。
商品の改良(ネーミング、テイスト、パッケージ)

そこで彼は抜本的に商品の改良に着手することにしました。まずは世界を目指す商品であったため商品名を「Red Bull」に改名。またテイストにも微妙な改良を加え、重要な成分の1つとされていた砂糖の量を減らし、炭酸を加えたのです。
また、あの細見で青とシルバーを基調にした現在のデザインにしました。これもDietrichによって計算されつくされたものになっており、商品が陳列されている中で一際目に付きやすいようにあのデザインになったようです。
忙しい人にとってみると、購入を決める一瞬の判断のカギはデザインだとされているようで、そのため目立つスタイリッシュなフォルムをしているんですね。
ターゲットを若者に絞ること!

これもDietrichが取り入れたアプローチの仕方の1つです。従来のブルーカラーの労働者層からターゲットを20代から30代の若者層に絞り、認知度を広めるために学生を雇用しました。ミニのデザインをRed Bull仕様に変更をして、無料で配布するサービスを開始したのです。
また、パーティドリンクとして販売を促進させるため、そのため若い層の集まるクラブでも無料の配布を行いました。彼はこのRed Bullという商品について確固たる自信があったのでしょう。だから飲んで試してくれれば売れるとそう確信だと思います。
金曜の夜、連勤の仕事終わり、みなさんも疲れていますよね。でも翌日休みだとしたら友達と遊びたい気持ちがあると思います。そんな状況の時、私たちにだったらどうしますか?エナジードリングを飲む方もいると思います。このようなニーズに完全に応えていったのです。
その結果、元気になれるドリンクとして若者層の間の口コミで徐々に認知されはじめ、風向きも良い方向へ変わっていったとされています。ちなみにクラブでの配布を促進させた背景から、現在では多くのお酒のレシピにRed Bullが使われるようになったんですよ。
Red Bullが主催するスポーツの大会

そもそも熱狂的なスポーツ愛者であり、パイロットの資格も持つほどのDietrichはエクストリームスポーツにも関心を寄せていました。エクストリームスポーツとは速さや高さ、危険さや華麗さなどの「過激な (extreme)」要素を持った、離れ業を売りとするスポーツの総称のことです。
ちなみに一番最初に主催されたのは1991年に開催された「human-powered flying machine」という企画で鳥人間コンテストのようなものだったようです。Red Bullのスローガンである「翼を授ける」というイメージから発想がきているんでしょうか。
エクストリームスポーツに限らず、今では多くのスポーツシーンでRed Bullという言葉を聞く機会がありますよね。現リバプール所属の南野拓実選手も前所属はザルツブルクというRed Bullの所有するサッカーチームでした。現在オーストリアやドイツなどを含め世界に5つほどサッカーのクラブも有しています。
世界で爆発的なヒットへ!

これらの戦略は見事若者層のファン獲得につながり、1987年にはオーストリアで100万本の売り上げを記録。1992年にハンガリー、スロバキア。1994年にドイツ、イギリス。1997年にはアメリカにも上陸し100万本が毎日売れるまでの大ヒット商品となりました。
その理由はいわずもがな、絞ったターゲット層(20代~30代の若い)への徹底的な売り込みです。様々なアプローチの仕方でRed Bullの人気は不動のものになりましたが、一貫して若者の好奇心を煽る。そのブレない姿勢が今日の地位を築いていると言っても過言ではないと思います。
実は、まだ飲めます。「Krating Daeng」
実はまだ「Krating Daeng」の製造は続いています。タイでは未だにRed Bullの3倍のセールスを記録しており人気が根強いそうです。どんな商品が元になってあの世界的に有名なエナジードリンクへと繋がっていったのか!タイに旅行に行かれる際には興味がある方は確認してみるのも面白いかも知れないですね。
ただし、成分がRed Bullよりも強いとされているようなのでコーヒーなどカフェインの多い飲み物と合わせるのは危険だそうです。飲む際はお気をつけて下さい。
価格の改定(2021年2月から)

2021年2月1日より、レッドブル・エナジードリンク185ml及びシュガーフリーの185mlは在庫終了時点で販売を中止にし、エナジードリンク・シュガーフリーの250mlの価格を従来の241円(税別)から190円(税別)に改定しました。
なぜ今価格の改定を行ったのか、明確な理由は公表こそされていませんが、時代に沿って柔軟な経営のかじ取りが出来るところがレッドブルの強みなのかも知れませんね。
まとめ
ある日ふと見た記事でRed Bullの前身がタイにあったと知り、興味を持ったため深堀してみました。意外なことに日本のリポビタンDにも縁があり、個人的に親近感が湧いてしまいました。とはいえ、Red Bullをそんなに飲むタイプではないのですが。笑
実は、Dietrichが世界に向けて商品の味や缶のデザインを変更して以降、大きな変更を行っていないんですよね。Red Bullって。そしてとにかく利益を広告に流す。
市場のトップに君臨し続けられる企業はどこか、一般人にはわかりえないアプローチの仕方でマーケティングを支配しているんだな。と私自身考えるところがありました。
目的を決めて、その目的を達成するために様々なアプローチをする。アプローチの方法だけ見ると、一見一貫性のないような戦略でも実は繋がっている。ブレない姿勢の大切さ。商品を信じること。Red Bullの経営戦略から大事なことを学ぶことができました。
その他に数々の海外ニュースを記事にしています。→台湾のLGBTQ権利獲得へ!ビジネスを始めるならルワンダがおすすめ!などなどよかったら併せて読んでみて下さい。
今日はこの辺で失礼します。ありがとうございました。
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